KANSAI UNIVERSITY

INTERVIEW | 私は、こんな人。 /17

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真の武士道について問い続ける。

 関西大学国際部で歴史社会学、武道学の研究に取り組むアレキサンダー・ベネット教授は、剣道教士7段、なぎなた5段の腕前をもつ国際的に名高い武道の名手。過去には、世界なぎなた選手権で準優勝を果たし、剣道のニュージーランド代表監督としてチームをベスト8に導いた。気さくで親しみやすい印象の教授だが、武道の話になると瞳に鋭い光が宿る。流暢に語る日本語からあふれてくるのは、剣道への誇りと情熱だ。
「ニュージーランドで生まれ育った私は、17歳の時に日本の高校へ留学。部活動で剣道と出逢いました。ある時、顧問の先生の手合わせに選ばれ、極限状態に追いつめられた果てに、悟りの境地のような独特な感覚に陥りました。自分が思うよりも肉体的、精神的な限界ははるか遠くにあり、まだまだやれると感じ、怖さは消えたのです。それから剣道にすっかり魅了されてしまいました」
 その後、初段を取り1年間の高校留学を終えて、母国へ帰国。すぐに剣道が恋しくなり、剣道同好会を結成した。仲間から「武士道とは?」などと質問され、的確に答えられない自分がもどかしく、再び日本で武道について学ぶ決意をしたという。
「武士道の定義について語るのはとても難しいです。ジャパニーズスピリットだと言う方もいますが、日本人の多くがその意味について答えられないようにも感じます」
 ベネット教授は自身の体験から、その答えは武道という実践を通してこそ見えてくるものだと考えている。
「剣道で実際に死ぬことはありませんが、他者と対峙し真剣勝負でぶつかり合い、その怖さに直面して生きる喜びを覚えることで、己の存在が見えてくる。それが武士道なのではないかと考えます」

武道の文化こそ、世界で共有すべき
日本が誇る世界遺産。

 もともと運動が得意で、サッカー、クリケットなど様々なスポーツを経験してきたベネット教授。だが他のスポーツと剣道には決定的な違いがあるという。
「例えば競技としてのフェンシングは、相手に触れるとライトが光り、1点となります。しかし、剣道の場合は一本を取る前後に何があったのか、立ち居振る舞いも含めてプロセスを判定されます。気剣体一致の一本の美学が重要なのです。だから、ガッツポーズは論外で、審判に一本を取り消されても文句が言えません。“残心”がないと見なされるのです」
“残心”とは、技を決めた後も気を抜かず、次の攻撃に備える心構えのこと。ベネット教授は、その解釈をさらに深く広げている。
「“残心”とは、相手の命を奪ったことへの懺悔や反省、周囲に常に気を配り、油断をしない心のあり方です。起きてしまったことを受け入れ、その原因や責任を考えることで、失敗を防ぐことができます」
 武道の修行を通じて、自らの弱点を知ると同時に、感情をコントロールして日々のストレスを減らし、集中力を高めることができる。武道の精神こそ世界のすべての人が共有できる貴重な財産だと考える教授は、その国際普及をめざし、英語による剣道専門誌「KENDO WORLD」を創刊、自ら編集長を務めている。また、これまでの研究成果を書き著した書籍「KENDO: Culture of the Sword」が米国で出版されている。
 さらに剣道の素晴らしさは、柔道や空手と比べてずっと続けられる武道であることだと教授は語る。
「剣道とは死ぬまで一本の美学を追求するもので、実際に100歳を越える剣道家もいらっしゃいます。私の目標としては、剣道家なら誰もが目指す八段の技術、人格をも問われる範士の称号の取得はもちろんですが、これからも“残心”の精神を忘れずに自らを鍛え、人格を高めながら、その強さを人のためにどう使うか、人生の稽古を続けていくこと、そして武道の精神を広めていくことが私の生きる道と考えます」

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