KANSAI UNIVERSITY

INTERVIEW | 私は、こんな人。 /23

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先進のLRTをはじめ、
公共交通の可能性を追求。

 欧米で普及が進み、国内でも富山県などで導入され、環境対策や地方都市再生にふさわしい公共交通として、先進のデザインとともに注目を集めるLRT※(次世代型路面電車)。関西大学経済学部の宇都宮教授は、このLRTをはじめ、バス、電車など公共交通の利便性を高めて、街や地域の再生に活用する重要性を説き、様々な地域と連携して全国的なネットワークを構築している。
「いま、日本の地方都市が衰退しています。街が寂れれば電車に人が乗らなくなり廃止され、車に依存する。運転のできない高齢者、それに若者までがひきこもり、街がますます廃れて地域の力が減退する。まさに悪循環に陥っています。公共交通が再生すれば、この悪循環を断ち切り、地域・社会にいい影響を与えられます」
 現在、宇都宮教授は大阪と堺市を結ぶ阪堺電車や大阪・日本橋などの再生に向けた研究を進めている。
「堺市は大阪への交通は発達していますが、堺市内の街は寂れてきています。阪堺電車では新型の低床車の導入を開始しました。けれども、単に車両を変えるだけでは成功とは言えません。車両とホームの乗降時の段差を解消してバリアフリー化し、電車の本数を増やすことも大切です。また、バスとのスムーズな接続や、自転車の駐輪場を増やすなど交通体系を再編し、都市計画として電車を活かすことも重要になるのです」
 関西大学に着任したことで、環境都市工学部の教授と共同でまちづくりの研究を進められるようになったという。
「大阪のなんばは、インバウンドのお客さんが増えています。阪堺線を少し延ばせば、大してお金もかからずに日本橋も阪堺線も再生できるのです。私の夢は公共交通をきっかけにしたまちづくりで、地域や地方を元気にすること。あらゆる街でLRTを導入できる訳ではありませんが、人口が20万人以上の街では、LRTは検討に値するでしょう」

※Light Rail Transitの略

海外で直面した経験から、
研究と教育の道へ。

 幼い頃から電車やバスなど乗り物に興味を抱いていた宇都宮教授。学生時代は経済学を学び、社会の問題を自分なりに解決していきたいという想いが芽生えた。大学卒業後は日本銀行に入行。金融の調査・統計分析に携わるなか、銀行から派遣された留学経験は、交通に対する見方を変える転機となった。
「イギリスのマンチェスターに留学した際、欧州ではLRTの導入で街の再生が進められていた。僕の育った水戸市より小さい街が元気だったのです。そして、留学当時は都心部が寂れていたマンチェスターも、その後LRTの導入で活気が戻っていることを知りました。交通というものが、地域再生のきっかけになることを確信したのです」
 当時、インターネットは現在ほど普及しておらず、エアメールで海外の雑誌を取り寄せ、英語はラジオ講座で学んだ。日本銀行在職中より公共交通と地方再生に関する多くの著書を手がけ、交通まちづくりを提唱する市民運動にも参加。地域公共交通活性化再生法の整備にも一市民として参画し、マイカーを使わないカーフリーデーなどの実践活動も行った。より本格的な研究と教育活動に取り組むため、2011年より関西大学へ身を転じたのだという。
「日本では高度経済成長期に人口が急速に増え、鉄道事業が大成功を収めてきたので、民間事業による黒字経営が当たり前という認識が広まりました。けれども、これは特殊な時代の産物です。今後、人口が減る日本で、このような成功はおそらく期待できません」
 海外では、公共交通は儲けの対象ではないと宇都宮教授は語る。
「効率的に予算を節約することは必要ですし、民間事業であることはもちろん悪いことではありません。しかし、交通市場は「市場の失敗」が発生するというのは、経済学上の常識です。だから、ヨーロッパでは行政がインフラとして土俵(下)を整備し、民間が運行サービス(上)を行うという「上下分離」といった運営方式が採用されています。日本でもみなさんの公共交通への意識を変えることが大切。そのことを広めていくことが僕の使命です。そして、社会を変えていくための教育も、未来への大きな投資につながると考えています」

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