KANSAI UNIVERSITY

INTERVIEW | 私は、こんな人。 /26

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面接官や教師を支援する
画期的なシステムを開発中。

 人間が知的な活動を行うためには、様々なスキルが必要となる。そのスキル育成のためにコンピューターを活用して支援する研究に取り組む小尻准教授。
「近い分野としては人工知能があげられます。近年の人工知能の研究では、人と模倣した振る舞いをするための技術が多く探求されていますが、私の知識情報システム研究室では、人のスキルを高めるための思考を明らかにしたうえで、その思考を助けてくれる技術について研究しています。例えば、プレゼンテーションを例に挙げますと、どのようにアイデアを出したり、どのような整理をすれば伝えたいことが伝えられるかということを考えます。そのうえで、アイデアのヒントをくれたり、アイデアを整理しやすくするためのソフトウェアを開発しています」
 現在、産学連携プロジェクトとして、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)と共同で就職活動支援システム「ICT面接トレーニング」を開発している。小尻准教授の教育・学習支援システムの研究と、脈拍などバイタルデータを活用するNTT西日本のICT技術を組み合わせた画期的な取り組みといえる。
「就職活動対策の模擬面接で、面接官がより適切なアドバイスができるように支援するシステムを想定しています。 面接者の“えー、あのー”など言葉の「ヒゲ」や語尾なども含めた話し方、ジェスチャーなどの応答態度を対象に、心拍、音声の波形、画像などを解析し、より効果的な見せ方でデータを提供するアプリケーションを検討しています。提供されたデータを見ることで、面接者が本来の力を発揮できるようサポートするシステムです」
 そのほか、中学校の歴史の授業で、事例の因果関係を整理するための支援システムも開発し、実用化に向けて進めている。
「例えば経済政策の成否には、金利や社会の情勢など様々な要因が関係します。どんな要因がつながっているかを子ども達が整理できれば、出来事を起こした原因を自分の言葉で説明できるようになります。その結果、過去の偉人の行動を勉強しながら、自分の価値観を変えていくことができるのではないかと考えています」
 また小尻准教授は、領域や分野などではなく、そこで使える能力に興味があるのだという。
「最近注目しているのは、『言語化』です。運動技能や感性など、言葉にできないものを教える場合、身振り手振りではなく言葉として伝えるのは大切です。また、教わる場合も自分の理解していることを言葉で認識すれば、自分の足りないことを理解するための助けになります。研究室では、野球や絵画を対象とした『言語化』支援システムの開発をとおして、目で見えないものをクリアにすることの可能性を探求しています」

人間は十人十色、だからこそ難しくも面白い。

 人工知能ブームが起こった学生時代、大学では家庭教師の役割をするソフトウェアを研究した。以来、人を支援することをテーマに研究を続ける小尻准教授は、その理由について語る。
「例えば画像処理なら、同じ条件の画像に対してはすべて同じ認識精度を出すことができるでしょう。けれども人間はそうは行きません。人間の知能や性格、スキルはすべて異なります。同じシステムを使っても結果が出る人、出ない人がいます。人にとって重要な特徴をうまく抽出して、多くの人に効果のあるシステムをつくる必要があるのです。それが難しくも面白くもあり、魅力的なのです」
 以前の大学では、複数の教員と運営する研究室に所属していたが、関西大学に赴任したことで転機が訪れた。
「関西大学の電気電子情報工学科は、電気から情報まで様々な分野の研究室があります。研究室を運営するにあたって、自分の研究のおもしろさを学生さんや他の先生方に伝える必要があると感じました。自分の研究の魅力について見つめ直した中で、特定の情報技術に焦点をあてるのではなく、『人』のためのシステムを作るための方法論だということに辿り着きました。『人』について深く考えること、多くの『人』に共通した特徴を抽出すること、その特徴をサポートできる技術を活用したり開発したりすること、『人』に作ったものを評価してもらうこと。実はこれらを考えられるスキルこそが、将来のエンジニアに必要とされている能力なのではないかなと思ったりしています」
 最近は、授業や就職活動の面接といった現場でシステム実用化に向けた活動が増え、研究から実践へとフェーズが変わりつつあると感じている小尻准教授。
「学校の先生や面接官の方々に、今までとは違う能力の上達が見られたと感じてもらい、教育支援に貢献できるような新しい方法をエンジニアとして提案できることが目標です。研究室の学生たちにも、社会に出るとそのまま使える研究はほとんどないかもしれないですが、研究過程で様々なことを深く考えることで、成長していってほしいと思っています。研究過程で得られたスキルこそが学生たちの将来を変えると思うと、教育者としても楽しいです」

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